捲土重来期す自民
保守票分裂に危機感も
参院静岡選挙区(改選数2)への2人目の公認候補擁立をめぐって、民主党本部と県連の対立が深まっていた3月中旬。自民党の安倍晋三元首相が静岡市での県神社関係者大会に足を運んだ。
安倍氏は開会前の控室で、党公認で立候補予定の元大学非常勤講師岩井茂樹氏(41)の手を固く握った。「何としても勝ち抜けるように頑張ってほしい」
党重鎮の励ましに、顔を紅潮させる岩井氏。「参院選は自民再生の第一歩。日本の将来を決める大事な選挙」とあいさつで気勢を上げた。
自民県連は三役辞任を受けた昨年末の臨時大会で、早々に候補者を岩井氏1人に絞る方針を決定。「昨秋の補選で名前を売り込んだ。逆風の中、40万票を獲得した岩井氏擁立は既定路線」(県連幹部)だった。
自民県連は67市町支部、業界友好団体との会合を2、3月に開いた。塩谷立県連会長は各会場で「捲土(けんど)重来に向け、自民党が一枚岩で戦いに臨めるかが問われている」とげきを飛ばした。2月には、三役が岩井氏と共に業界団体をあいさつ回り。異例の取り組みは「これまでにない手厚い対応」(多家一彦総務会長)。2人目の候補者擁立でごたごたが続く民主党を尻目に、自民は一致結束を図る。
ただ、懸念はある。離党者が相次ぎ、与謝野馨元財務相らによる新党結成の動きが急だ。保守支持層分裂の可能性もある。県連幹部は「離党に拍手を送る党員はいない。勢力闘争ではなく今すべきは党内改革。地方の実情を把握し、新生自民の姿を見せなければ、選挙は戦えない」と批判する。
民主が静岡選挙区の2人目の公認候補を発表した2日、みんなの党の渡辺喜美代表は記者会見で、静岡を候補擁立の有力選挙区の一つに挙げた。みんなの党は全国的に支持率を上げているだけに、自民は危機感を募らせる。
自民と連立政権を担った公明党。阿部時久党県本部代表代行は「連立野党はない」と自民との共闘を否定。「野党となったことで足かせなく自由な活動ができる面もある」とも述べ、公明票の行方は不透明だ。
県内の政治情勢に詳しい法政大大学院の白鳥浩教授は「新党の動きは参院選の票の流れを複雑化させるだろう。民主党が政権に定着できるのか、選挙結果によっては政界再編を加速させていく大きな節目になる」と予測する。
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静岡選挙区には共産党の渡辺浩美氏(49)と政治団体「幸福実現党」の中野雄太氏(36)も立候補の意向を表明している。
(政治部・中島忠男、橋本和之、杉山武博、東京編集部・塩見和也が担当しました)
(静新平成22年4月5日「攻防2010・参院選しずおか:下」)
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